第14章 孤独
「あ、あんたねぇ! 仮にもアタシは男なのよ!? もっと恥じらいなさいよ!!」
「煩いわねぇ……ちょっと黙ってよ。というか、男だったの?」
「気付いてなかったわけ!?」
「やっぱり、契約の刻印がない」
「って聞きなさいよ! まぁどうでもいいけど、あんた性格変わり過ぎなんじゃないの!?」
「そんなことないわ、きっと、私の中にあった物の一つだから」
「え……?」
静かに湧き上がる嫌な感情。
「ほんと、全部嫌になる」
「憎い?」
「憎い……かもしれない」
聞き訳のいい人間になれるだなんて、綺麗ごとはこの際言わない。憎いと聞かれれば憎いのかもしれない。でも、たぶんそれ以上に許せなくて憎いものがある。
「私ね、両親が死んだ時……凄く、怖くなった。私の知っている人間が突然いなくなって、一人になって。どんなに親族の人が、本音はどうあれ私を引き取ってくれて、良くしてくれても私はこの人達の本当の子供になることはないんだって思うと、どうにも馴染めなかった」
だって、本当の両親にもなってくれないってことだから。勿論代わりにも、なりはしなかった。
「人間って一々くだらないことばっかり考えるわよね。一人で生きるとか、それが寂しいとか。寂しいって思うのわね、誰かがいるからでしょ」
「そんなこと……」
「今までのあんたがどうとかは知らないけど、誰かがいてくれたから今あんたは寂しくて憎いんじゃないの? 最初から一人だったなら、一人が寂しいなんて思いやしないのよ」
「確かに、そうね」
「あんた、救われたいわけ? そうやって寂しい気持ちを誰かに伝えて、同情されて一緒にいてくれるのを待ってるの?」
黙って聞くことしか出来なかった。そんなことないって強く思っているのに、心の何処かでそんな自分がいる気がして。