第14章 孤独
「ああ、そういえば助けてと何度も後から私を呼ぶ声がした気がしましたが、彼らが犯人である確実な証拠が必要でしたので貴女がドラッグを打たれるまで、録画して待機しておりました」
「っ……」
「そんな顔をなさらないで下さい。私は貴女の為に、確実な証拠集めに尽力していたのですから」
悪魔の癖に、言葉巧みにあたかも自分は悪くないと主張する辺りが、悪趣味だと思った。私は上手いこと、この男の掌の上で踊らされていたのだろうか?
「途中で死神がきたのには驚きましたが、ということは……貴女はいずれ死ぬということですね。つまり、このドラッグが原因なのでしょうか?」
「びょうい……ん、に」
「行っても無駄でしょう。今までの事件で、被害者が生きたまま病院に運び込まれたケースは何度もありますが、その全て被害者は助からなかった。彼らの言う”天使”になれなかった為に」
「てん……しなんて、いない」
「そうかもしれませんね」
天使はいない、神様もいない。それは両親を失ったあの日に、嫌というほど実感している。同時に、今この状況がいい方向に向かないのも神様がいないからだとも思っている。好転させる糸口が、私には見つけられない。
「アリスお嬢様。私は、貴女の魂を傍でずっと見て参りましたが、これほどまでに成長することを拒み続け悲劇のヒロインぶっている胸糞悪い人間を、初めて見ました」
彼はもう、ぴくりとも笑っていなかった。