第14章 孤独
この状況を見ても、慌てる様子も心配する様子も見せないことに、私は一人違和感を覚えていた。ミカエルは私の執事なんだよね? 助けて、くれ……ないの?
「無様に這いずり回る爬虫類みたいで、大変滑稽ですよ、お嬢様」
「ミカ……エル……」
「そろそろうんざりなんですよね。貴女という人は、あれから何も変わってはいないのですから」
鉄格子越しに見えた彼は、にんまりと嫌な笑みを浮かべて眺め続けていた。手を差し伸べる様子もないし、そんなこと……まるで、どうでもいいかのようで。
「粗悪品な魂も、数年時を経ればよいスパイスでも加わるかと思ったのですが……そうでもないらしいですね」
「たす……け……」
「助けを乞うだけ、私を頼るだけ。貴女は何もできない、なのに何も出来ようとすらしない。貴女は満足だったのでしょう? 自分が一人じゃないことに、悪魔の私だとしても自分の傍に誰かがいてくれるという安心感で満ちていたのでしょう?」
「ちが……っ」
「何が違うんですか? こうしてラビットファミリーに捕まって、わざわざエンジェルドラッグの犯人達の中へ自ら飛び込みドラッグを投与される。なかなか滑稽で、面白かったですよ」
「まさか……っ!?」
「さあ? 偶然、アリスお嬢様が捕まっているなぁと、光景を目撃したのですが助けろとの御命令はその時なかったので事件解決の為、情報収集を優先しました」
「そん……なっ」
鉄格子をすり抜けて、彼は私に近寄り冷笑を浮かべ見下ろした。