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テイルズ短編集

第4章 【X2】なぁ、たまには クルスニク兄弟


「さて、そろそろ自室に篭る」
そう言うと膝の上でふてぶてしく寝ているルルを俺に預け、時計やペンなどコートのポケットに入れていた小物をテーブルに置き兄さんは立ち上がった。
「今夜も仕事を持ち帰ってきたのか?」
ズシッとするルルを抱え問う。
「あぁ。最近お前といる時間が少なかったからな。」
微笑むと俺の頭を撫で自室のドアを開ける。
「また明日、ルドガー....とルル」
微笑みながら自室に消えた兄さんに向かって小さく呟く。
「....別に、寂しくなんかないし。....ユリウスのバカ兄」
うみゃ?と見上げるルルをギュッと抱きしめる。
「....さて、俺も部屋に行くか。」
施錠を確かめキッチンダイニングの電気を消す。
窓からの街頭の淡い光がキッチンダイニングを微かに照らす。
ふと、テーブルに視線を移すと先ほど兄さんが置いて行った小物が目に入った。
「なんで今夜は置いていったんだろ」
乱雑に置かれた小物を整え時計を手に持ち開く。
ずっと兄さんが持っている時計。
どんなときでも兄さんと一緒。
不意に、俺がクランスピア社に入っていて兄さんと仕事が出来ていたらこの時計のようにいつも兄さんと一緒に居れたんじゃないか。

そんなことが頭を過ぎった。
「....寂しかったのか、俺....」
自分でも気がつかなかった感情に気がついて仕事を持ち帰ってまで時間を作ってくれた兄さんに尊敬と感謝の念を感じた。
手の中の時計を静かにテーブルに置き、自室へ向かう。
「ありがとう、兄さん」
兄さんの部屋のドアに向かって呟き、ドアを閉めた。

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