第101章 練習の成果
「……すみませんでした。」
自分が緩めてしまった、
凛さんのシャツのボタンを閉める。
よく考えたら、
女性のボタンを緩めることは頻繁にあっても、
閉めるなんて行動を取るのは
生まれて初めてな気がした。
「こちらこそ、すみませんでした。
今度からはもっと言動には気を付けます……」
「……多分無理だと思いますけどね。」
俺の呟きに反応して、
不満そうな表情を浮かべる
凛さんを見ていると、
自然と顔が緩む。
「凛さんは基本的に
天然で男を挑発してるんで、
直そうと思って直すのは無理ですよ。」
「……じゃぁどうしたらいいの?」
「どうもしなくていいです。
今みたいに、
ピンチになったら絞め技に移行しましょう。」
「そうなる前にどうにかしたいんだけど、
その方法はないってこと?」
「ないですね。」
「こら、考えてくれる気ないでしょ。」
肘で胸元を突かれ、
身体が揺らぐと同時に笑い声が漏れる。
それに釣られて
笑い出した凛さんの表情は柔らかく、
安心感を覚えさせてくれた。
あんなことをしてしまった後だから、
今後気まずい関係になってもおかしくない。
むしろ気まずくなっても
仕方ないと思っていたのに、
凛さんは空気を和ますのが上手い。
ここでも兵長の言葉に、そっと深く納得した。