第95章 気持ちと記憶の整理の時間
「君が元の世界へ戻ることがあるなら、
考えた方がいいとは思っておったが、
どうしようもないことかも知れんのなら、
考えても仕方ないか。」
「戻ってみないことには分からない……
ということですか……」
その意味をふと考える。
それより先に、ピクシスは口を開いた。
「それはそれで、なかなか恐ろしいな。
もし戻った先が遠い未来だったとしたら、
君は知り合いが誰もおらん状態で
生活を再開することになる訳だろう?」
「……かなり怖いですね。」
そうなった時のことを
軽く想像してみるだけでも、
考えを中断したくなくなる程の
不安感が込み上げてきた。
「まぁ、君は戻るつもりはないようだし、
薬で対策せねばならん程の眠気に
襲われている訳でもない。
あまり深く考えて
無駄に悩みを増やさん方がいいな。」
「……はい。」
「大丈夫だ。
もしまた何か不安なことがあれば
ワシに話に来ればいい。
多少の気休めにはなるだろう?」
「ありがとうございます……」
ピクシスに頭を下げながら、
おじいちゃんが言ってくれた“大丈夫”と
同じ安心感を覚える。
確かに、考えてもどうにもならないことは、
今考えない方がいい。
せっかく眠れるようになって来たのに、
また不眠気味になって
仕事に支障を来すことの方が怖かった。