第94章 キスの相手
「……だが、知りたくないことまで
知れてしまうのは問題だな。」
「何の話……」
そう言いかけて、唐突に奪われた口は、
紡ごうとした言葉を飲み込んだ。
何の前触れもなく、
優しいキスが繰り返され、
頭の中は若干の混乱の色を帯びていても、
その唇の心地良さにはすぐ絆されていく。
唇が離れる頃には、
震えが起きそうな足を支えるために
エルヴィンの胸元にしがみ付いていた。
「君はキスが好きだね。」
「……そうみたいだね。」
つい、曖昧な答え方になる。
エルヴィンの笑い声が降って来てすぐ、
強く抱きしめられ、
自然とエルヴィンの腰に手を回した。