第94章 キスの相手
エルヴィンは凛に気付かれないくらいの
小さなため息を吐く。
「……俺にだけ、だったらいいんだが。」
「え?」
こんな湧き続ける独占欲を
剥き出した発言なんて、聞かれなくていい。
聞こえていなかったのか、
ただ聞き返したのかは分からないが、
もう一度言う気になんてなれず、
替わりに再び唇を重ねる。
きっと凛よりもっと、俺の方が
この行為を好きだと感じている。
凛は今、誰と一番、
こうしたいと思っているんだろうか。
ただ自分の考えすぎというだけであってほしい。
いつもと何かが違う、そんな違和感は、
自分の思い違いであってほしい。
凛の腰をまた強く引き寄せ、
丁寧に慎重に、キスを続けた。