第10章 どうしても気になる女
こうして調査兵団の団長と
会話をしている事実に戸惑いつつも、
兵舎に帰ったらエレンに自慢してやりたい、
という気持ちが芽生えてくる。
調査兵団の兵士に強い憧れの眼差しを
向けているあいつに、団長と会って話をして、
更にお礼まで言われたことを言ったら
どれだけ驚き、羨ましがるだろうか。
「そう言えば、名前聞いてなかったね。
君、何て名前なの?」
女に顔を覗き込まれ、視線を合わせる。
「ジャン・キルシュタイン……です。」
一応団長の前では、
この女にも敬語使っておくべきだろう。
調査兵団に興味はないが、
敵を増やすような真似はしたくない。
「ジャンか。名前はあんまり馬っぽくないね。」
「当たり前だろ!」
女の余計なひと言に、
思わず声を張ってツッコミを入れた後、
目の前で少し目を丸くする団長と
バッチリ目が合い、咄嗟に自分で口を塞いだ。