第88章 穏やかな時間
「でも、今回のことは完全に自業自得だから。
あんなに忠告されてたのに、油断した罰だよ。」
「モブリットには知らせないでおく、
ということか?」
「うん。
これ以上迷惑かける人を増やしたくない。
エルヴィンは既に巻き込んじゃってるしね……」
「……俺は巻き込まれて迷惑どころか、
満足しているが。」
ニヤリと引き上がった頬を抓むと、
エルヴィンの頬はますます緩む。
「それに、今回のことは
君の自業自得ではないよ。
全てあの憲兵が悪い。君に全く非はない。」
「……ありがとう。」
「彼については、然るべき処分が下るだろう。
前科もかなりあるようだしね。」
「……被害者が増えない為にも、
その方がいいだろうね。」
少し後ろめたい気持ちもするが、
もうあんな恐ろしい思いはしたくない。
今までにも
そんな思いをした人が居ると思うと、
鳥肌が立つような不快感が胸を締め付けた。