第88章 穏やかな時間
「……ん……わ、寝てた…!」
凛は目を覚ますと同時に声を上げる。
突然発せられた大きな声に驚くが、
いつもの表情に戻っている凛を見て、
安心感も芽生えた。
「……いや、寝たんじゃなかったね……」
「ああ……まぁ、そうだが、
今は本当に寝ていたみたいだよ。」
凛は少しバツが悪そうに目を伏せている。
そんな姿さえ愛らしく思え、
ますます強く抱きしめた。
「エルヴィン、ありがとう……楽になった……」
「そうか。良かったよ。」
「……でも、結構引いたでしょ?」
「なぜ?」
「……本当によがり狂ってたから。」
凛の一言に思わず吹き出す。
「わ、笑いごとじゃないでしょ?!」
「いや……そんな心配、必要ないよ。」
笑い声を抑えることが出来ず、
肩を震わせたまま、凛の髪を撫でた。