第10章 どうしても気になる女
「凛!!」
基地の中から出て来た大柄な男は、
少し大きな声を出して女に近付く。
辺りが薄暗いから、
男の顔までは見えそうにない。
“凛”、か。
あの女は凛って名前なんだな。
名前すら聞いていなかったことに
今さらながら気付いた。
「あ、エルヴィン。今日は帰りが早いんだね。」
……エルヴィン……?
女の呼んだ、聞き覚えのある名前に
思考を凝らす。
……エルヴィン……
エルヴィン……
エルヴィン・スミス!!!
調査兵団の団長じゃねぇか!!!
鼓動の動きが一層早くなり、
反射的に胸元を手で押さえた。
あの女……
調査兵団の団長を呼び捨てで呼んでる……?!
かなり若い女に思えていたが、
実際はそうでもなかったってことか?
それとも、あの女は団長の……?
色々な考えが頭を過り、
混乱しながらも全神経を耳に集結させ、
二人の会話を聞き入った。