第77章 ●償い
「……どうした?」
突然目を閉じ、
言葉を発さなくなった凛の頬に
手を当てる。
既に少し火照った肌に、
指先が離れたくないと言っているようで
そのまま耳元までゆっくり滑らせた。
「んんっ……」
「こうされるのにも弱いのか?
性感帯が多すぎるだろう。」
「……そう。だからほんと、困るんだよね。」
つい漏れ出してしまったような妖艶な吐息が
自分の身体の反応を促す。
これだけで反応するものだっただろうか……
ふと考えを巡らすが、
そうだった記憶は呼び起こされなかった。
「今何か思い出しそうだったんだけど……
ダメだな。
何でこんなに色々忘れてるんだろう。」
「別れたのは一年も前なんだろう?
それなら忘れていても
不思議はないんじゃないのか?」
「……そうなんだけどね」
「忘れられなくなるような男だったのか?」
俺の問いが的を射ていたのだろう。
会話はそこで途切れ、
少しの沈黙が部屋を満たした。