第76章 過去と今の差し替え
「この質問には何の意味があったんだ?」
「……ごめん。特に意味はない。」
そんな顔をしておいて、
意味がないなんて有り得ないだろう。
それに今、少しだけ思い当たる記憶が
呼び起こされた。
「お前の世界に居た、
俺に似た奴と関係があるんだろう。」
そう問うと、凛の指先が小さく動く。
相変わらずこいつの動揺は分かり易い。
「……私のいた世界で、
御食に全く同じことを言われたことがある。」
口を開いた凛は、大きくため息を吐いた。
「そいつもミケという名前だったのか?」
「うん。
姓の方が“ミケ”だったんだけどね。」
「……何だろうな。顔も似ていたんだろう?」
「かなりね。似ていた、っていうか……
ミケを初めて見た時は、本人だと思った。」
その時のことを思い出したのか、
さっきまで強張っていた凛の表情は緩んだ。