第71章 繋がる日
「……今日は甘えん坊キャラかなぁ。」
「なんだ?」
「いや、何でもない。コルク抜けた?」
「ああ。」
私の呟きは
本当に聞こえていなかったのだろう。
特に何も気にしていない様子で、
ワイングラスには
濃いガーネット色の液体が注がれた。
「いい匂い。
匂いだけでも高そうって分かるね。」
「まぁナイルから貰ったものだからな。
それなりに値は張るものだろう。」
「今回は何でくれたの?」
「……さあ。ただの気まぐれじゃないか。」
凛のキス顔を
まじまじと見てしまったお詫びに貰った。
何てことを正直に言える筈もなく、
エルヴィンは凛に気付かれない様に
小さく息を漏らした。
「あれ。
エルヴィン、ワイングラスって一つ?」
「ああ。最近割ってしまったから、
部屋にはこれしかないんだ。」
机に置かれたグラスは一脚だけで、
エルヴィンはそれを特に気にする様子もなく
ワインを注ぎ終えた。