第69章 明かされていくエニグマ
「さて。何から話そうか。」
店員に案内された円卓の席に着くと、
ピクシスは少し目を瞑って考える。
「……あれは、
もう40年以上前の話になるな。
ホテルに泊まっていた筈の男が、
突然いなくなったと通報があってな。」
「突然?」
「ああ。
支配人とその男が部屋の前で話をして、
男が部屋に入ったのは見届けたらしいんだが、
数時間後、その部屋に
男の知り合いの女性が訪れた時には、
もう男はいなくなっていたんだと。」
「男性が部屋を出たところを見た人は
誰もいなかったんですか?」
「支配人は
ずっとフロントにいたらしいからのう。
それに、あの部屋には窓もない。
フロントの目の前の出入り口以外から
外に出る方法はなかった。」
……確かにあの部屋には窓がなかった。
おじいちゃんの家にある
“使者と繋がる部屋”との共通点はそこだ。
出入り口は一つしかない。