第65章 眠れない夜は
モブリットの問いに答えず、
布団の中に潜り込む。
その時のことを思い出しただけで、
また胸が苦しくなるようだった。
「今日は眠れそうにないから、
俺の部屋に来たんだろう。
分かってるから、
早く休んで欲しいと思ってるんだよ。」
「……迷惑な役回りだと思った?」
「思わないよ。
むしろ、俺がその役目を任せてもらえるなんて、
光栄なくらいだ。」
穏やかな声と、優しい体温が身体を包み込む。
やっぱりモブリットに会いに来て良かった。
そう思わずにはいられないような抱擁だった。
「話したいと思ったら聞くし、
このまま休みたかったら
目を瞑ってくれていい。
今の君の気持ちは俺にもよく分かるから。」
モブリットは今まで、
きっと何人、何十人もの遺族の元へ
出向いたことだろう。
私はたった一人の遺族に出会っただけで、
こんなにも虚脱したような状態になってしまって
情けないと心底思う。