第5章 モブリットの情動
……が、
特に拒絶する様子のない
凛さんを見て、不意に動きが止まる。
「拒否……しないんですか?」
吐息で髪が揺れるくらいの距離のまま、
そう問いかけると、
凛さんは軽く目を瞑った。
「うーん……
モブリットはエルヴィンたちの部下な訳だし、
拒否しないといけないとは思うんだけど。
それ以外に拒否する理由が、
思い浮かばないから。」
ハッキリとした拒否する理由が
思い浮かばないから、拒否しない。
この人は、そんな理由で
俺を受け入れてくれようとしてるのか。
そう思うと、自然に身体が離れた。
なるほど……
自分はなかなか我儘な人間なのかも知れない。
「……それが俺を拒否しない理由なら、
やっぱり俺はこれ以上、
凛さんに近付けないです。」
「……どういうこと?」
不思議そうな声を聞いて、一度浅く呼吸をする。