第5章 モブリットの情動
「……前の世界にいた私だったら、
絶対さっきのタイミングで
モブリットのこと誘ったよ。」
その一言で、せっかく治まってきた熱が
再び顔に集中してくる。
「モブリット、
顔の赤みが全然引かないね。」
「凛さんのせいですからね!!!」
すかさず反論すると、
今まで見た凛さんの笑顔の中で
一番緩んだ表情が目に留まり、
一瞬鼓動が動きを止めた。
「そうでした。」
肩を震わせて笑いながら、
俺の意見に同意する凛さんに
目を奪われる。
巨人と出くわした時よりもっと、
心音が厭に煩い。
モブリットは布団から出ている
凛の手を、自然と握った。
「モブリット……?」
俺が思い掛けない行動に出たからだろう。
今までに聞いたことのない声色で
名前を呼ばれ、一度動きを止める。
……でも、もう自分を抑制する自信がない。
頭の中ではダメだと分かってるのに、
身体は理性を保つことを強く拒み、
衝動を抑え切れず、
ベッドに横になっている凛さんに
顔を近付けた。