第32章 エルヴィンの感情
「……だが、顔色が悪いな。
相当疲れているんじゃないか?」
「それはエルヴィンも一緒だからね。」
凛はそう言うと、
同じようにエルヴィンの頬に手を当てる。
さっきまでエルヴィンによって
温められていた手は
髭の生えかかった頬をゆっくり撫でた。
……こうされるとますます身体が疼く。
衝動的になってしまう前に、
凛から手を離すべきなのは
重々承知しているが、
身体はいうことを聞きそうにない。
離したくない。
彼女にずっと触れていたい。
そう思ってしまう。
「調査前は毎回こんな感じだから、
もう慣れたよ。
だが君は違うんだ。辛ければ休んでいい。
本当に大丈夫か?」
エルヴィンは膨らんでくる情動を誤魔化そうと
少し早口になる口調でそう言った。
「大丈夫……じゃないかも。」
「……そうだろうな。今日はもう休んで」
「そうじゃなくて、」
唐突にエルヴィンの発言を遮った凛の唇は
「……エルヴィン、キスしていい?」
と、予想を遥かに裏切る言葉を紡ぎ出し、
エルヴィンは言葉を止めた。