第30章 女慣れした新たな仲間
対人格闘の訓練にも
少しだけ参加させてもらったことはあったが、
もう殆ど覚えていないし、それ以前に
まるでセンスがなかった記憶しかない。
「エルド……ごめん。
全然相手にならないと思うけど」
「“やってるフリ”も兵長に
見抜かれる可能性はありますけど、
やらないよりはマシだと。」
凛の声を遮ったエルドは、
一瞬リヴァイの方に目を向けたかと思うと、
次の瞬間には凛の首の横・脇の下に腕を入れ、
首を固定するように頸動脈を圧迫した。
「……っ」
呼吸が寸断され、凛の顔は瞬間的に歪む。
「すいません。
これ、絞め技なんで
結構苦しいと思うんですけど、
この態勢じゃないと顔見られる可能性あって、」
エルドはそこまで言って、少し首の圧迫を解き、
その隙に凛はすかさず酸素を確保する。
「はぁっ、……だっ、大丈夫。」
掠れた声で大丈夫だと言っても
信じてもらえないだろうな、と思いつつ、
「これって抵抗した方がいいよね?」
と、身体を揺らし始めた。