第29章 依存
リヴァイたちの会話を
黙って聞いていたエルヴィンは、
大きくため息を吐く。
皆はそれに反応し、一瞬言動を止めた。
「もういい。」
エルヴィンは一言それだけ言うと、
ベッドの方へ足を進める。
もういい、そんなことはない。
いいはずがない。
実際は嫉妬で気が狂いそうだ。
ミケに対してこんなに憤怒が
湧き上がることがあるのか、と呆れ、
そんなにも憤っている自分に虫酸が走る。
「取り敢えずいつまでも凛が
そこで寝ている訳にはいかないだろう。
部屋まで運ぶ。」
なるべく冷静な口調で言ってみるが、
きっと表情が伴っていないのだろう。
横目で見たモブリットは、
生気の乏しい青白い顔になっていた。
自分がこのまま凛を部屋に連れ帰るのは
本当に得策なのだろうか。
凛が自分の目の前で起きることがあれば、
きっとまた酷く当たってしまう気がする。
それならいっそ、ここで寝かしておいた方が
いいのではないだろうか。
……が、ミケの部屋で
凛が一晩を明かすなんてことを考えると
再び不愉快な気分が身体の中で滾ってくる。
やはり連れて帰るしかないということだな。
エルヴィンは出来るだけゆっくり息を吐くと、
目の前で横たわる凛に手を伸ばした。
その時、ゆっくり凛の瞼が開き、
乳飲み子の様に頼りない視線が
エルヴィンを捕らえた。