第28章 互いの要件
「……正直に話すが、本当に何もしていない。
凛に聞いてみてもいい。
確かにホテルには行ったし、
そのつもりでもあったが、
そんな気分じゃなくなったんだ。」
「そんな気分じゃなくなった?
凛の裸体を見ても
抱く気が起きなかったということか?」
不信感を露わにしたエルヴィンの問いに、
「だからそこまでいってねぇよ!
それぞれでシャワーを浴びただけだ!」
と、ナイルは再び声を荒げる。
だがすぐに冷静さを取り戻そうと
首筋を軽く掻き毟り、
「お前のことだから、
凛にも身体を使った接待でも
させてんだろうと思っていたが、
あいつのことは
随分大事にしているようだな。」
そう言って間近に迫っている
エルヴィンを見入った。