第28章 互いの要件
薄暮の迫る頃。
団長室にはナイルが訪れていた。
「わざわざここまで来てもらって
悪かったな。」
悪かった、と口にしてはいるものの
表情が全く悪びれないエルヴィンを見て
ナイルはこれ見よがしにため息を吐く。
「本当だ。
こっちは久しぶりに仕事が早く終わったから
自宅に帰ろうとしていた最中だったんだが。」
「最近あまり帰れてないのか?」
「こっちもこっちで忙しい時期くらいある。
それより要件は何だ。」
「あまり家に帰っていない、ということは、
最近はマリーや子どもたちとも
会っていない、ということか?」
「おい、そんな世間話はいいから、要件を」
「久し振りの女の抱き心地は、
マリーと比べてどうだった?」
ナイルの言葉を遮ったエルヴィン一言で、
団長室は一気に静けさに包まれた。