第26章 本当の望み
完全に日が沈んだ頃、
ナイルと凛の乗った馬車は
調査兵団の基地の前で停まった。
「基地まで送ってくれてありがとう。」
「いや。ついでだから問題ない。」
「調査兵団の基地に何か用事があったの?」
「いきつけのバーがこの付近にあるんだ。
久し振りに寄ろうと思ってんだよ。」
「そうなの?!
一人だけズルいなぁ……」
「連れてってやってもいいが、
もうこの時間だからな……
エルヴィンが心配してんじゃねぇのか?」
いかにも高価そうな
懐中時計を手にするナイルは、
空いている手で気怠そうに顎髭を撫でる。
初対面の時は師団長なんて
偉い肩書を持っている人には
全く見えなかったけど、
ホテルで様々な討論を繰り広げた後の現在は、
ナイルが兵団を仕切る立場でいることに
何ら疑問は感じなくなっていた。
ナイルは“憲兵団の師団長”に
ふさわしい人材なんだと思う。