第5章 モブリットの情動
「ありがとう……
でも、ほんとに大丈夫だから。」
“大丈夫”
その言葉を、一緒に過ごしていたこの数日間で
何回、何十回聞いたことだろう。
普段なら気にならない言葉だが、
今日はヤケにその言葉が頭の中に残り、
自分を安心させるような笑顔を
浮かべる凛さんの腕を掴んだ。
「俺に話しても無駄だと思うから、
いつもそうやって“大丈夫”しか
言わないんですか?」
俺が予想外なことを口走ったからだろう。
かなり目を丸くしている様子を見て、
少しばかり自分の発言を後悔する。
……だが、ここまで言ってしまったら、
最後まで言うしかない。
腹を括り、再び口を開いた。