第5章 モブリットの情動
前々から思っていたことだが、
凛さんは周囲に異様なまでに
心配を掛けないようにしているように感じる。
それがどういう本心からの行動なのかは、
まだ分かりかねているけど、
彼女が人に迷惑を掛けたくないと
強く思っていることは確かだろう。
「凛さん。寝られない理由は
自分で分かってるんですか?」
そう問いかけると、少しの間の後、
凛さんは軽く頷いた。
「もし俺で力になれることがあれば、
何でも言って下さい。
理由がわかるなら、対処の仕方も
一緒に考えることが出来ますから。」
自分がここまで凛さんの睡眠を
促そうとする理由もイマイチよく分からないが、
ただでさえ努力家な彼女が
苦しんでいる姿は見たくないからだ。
……という結論を、頭の中で導き出した。