第158章 番外編《それぞれの“これから”のすごしかた》
「すまない、少し重い話になってしまったな。
せっかくやっと凛に再会できたのに。」
エルヴィンに優しく髪を撫でられて、二人の会話に聞き入っていたことに気付き、ハッと我に返る。
「ううん。私ももっと色々知りたい。
あの世界に居た期間は短かったけど、私にとっても大事な世界だったから。」
「ハンジが戻ってきたら、詳しく聞かせてもらおうか。」
モブリットがエルヴィンのその一言に大きく頷いた時、部屋のふすまが勢いよく開いた。
「凛!もう一人、酔いが醒めるもの連れて来たよ!!」
息を切らすハンジの頭上から顔を覗かしたのは、またしても懐かしく優しい表情だった。
「ミケ……」
声が少し震える。
当時を思い起こさせる香りが近付き、ミケの存在を確認するように、自然と伸びた手でミケの指先に触れた。
「俺抜きで早々に飲み始めてるとはな。
あんなに濃厚につるんでいたのに、薄情な奴らだ。」
「ごめん、ごめん!私が悪かったって!」
ハンジはミケを宥める様に肩を押し、その場に座らせた。
「ミケ……久しぶりだな。」
「……ああ。」
それだけの会話なのに、エルヴィンとミケの間の空気が同一のものになったような気がする。
それくらい、二人の間には未だに深い信頼関係が刻まれている気がした。