第158章 番外編《それぞれの“これから”のすごしかた》
「モブリットは自分の命と引き換えにハンジの命を救った。
ハンジが生き残ったことで成し遂げられた成果は多い。
だが、そのお蔭で仕事から離れた時のハンジは、長い間廃人だったといっても過言ではねぇ状態だった訳だ。」
リヴァイの発言に返事をすることが出来ず、口を閉ざす。
その時のハンジの心境・自分よりハンジを生かすことを選んだモブリットの最期。
それを想像しただけで、鉛を呑んだかのように胸の奥深くに重い圧が掛かった。
「なるほど……モブリットらしい最期だな……」
エルヴィンはフーッと長い息を吐く。
そして隣に座っているモブリットの背中を、撫でるかのように優しく叩いた。
「……エルヴィンも、その時のことは知らなかったの?」
「ああ。」
簡単に返事だけしたエルヴィンの表情は柔らかい。
が、当時のことを知らないということは、エルヴィンはその時既に……
そう思うと、ドクンと心臓が大きく跳ね上がる。
「エルヴィンは俺が殺した。」
リヴァイが補足するように言い放った言葉が衝撃的過ぎて、跳ねた心臓は、一瞬鼓動を刻むのを止める。
これは私が深く聞いていい話じゃない。
リヴァイの真摯な瞳を見つめるのも億劫になり、目を伏せるが、エルヴィンの溢した微笑に反応し、すぐに顔を上げた。
「そうだな。
リヴァイが俺を許してくれたから、俺は最期まで団長として生きられた。」
「……許した?随分優しい言い方をしてくれるじゃねぇか。」
「そうだっただろう?
俺の最期の記憶は、煮え切らない俺の背中を、お前が強く押してくれたということだけだ。」
「その後何があったかも知らねぇくせに、俺を正当化するようなことを」
「その後のことなど、どうでもいい。
俺はお前に決断を…夢を、任せたんだ。
その自分の判断を後悔したことなんて、生まれ変わった今も一度もないよ。」
ただ、あの世界の真相を今すぐにでも聞きたい気持ちは山々だが。
そう付け加えて笑うエルヴィンは、本当に穏やかな表情をしていた。