第151章 変わらぬ想い
「凛を忘れることはないよ。絶対に。
それに、凛は特別なんだ。
彼女がここに居ても、居なくても、ずっと。」
デリアは思わず唇を噛み締める。
何故モブリットさんは、ここまで凛さんに執着するんだろう。
それ以前に、可愛い女の子にここまでさせておいて、全く迷いのない瞳をしている彼に対して、もう苛立ちを隠し切れなかった。
「それなら、凛さんの代わりでもいいです!
さっきモブリットさんが少し反応したのは、私が凛さんと似ているところがあったからじゃないんですか?
モブリットさんが、凛さんを想ってるままでも……それでも」
「凛の代わりなんていらない。
凛以外、欲しくないんだ。」
悉く私の意見は遮られ、却下される。
もういなくなった相手に全く勝てないという事実が、どんどん自分を惨めにさせた。
「デリア。
君はもう少し自分を大切にした方がいい。」
「……モブリットさんにしか、こんなことはしません。」
「ありがとう。
そこまで俺を買ってくれているのは素直に嬉しいよ。
だけど、こんなことをするまでの価値は、俺にはないから。」
いつもの優しい笑顔が、逆にこっちの胸を締め付ける。
モブリットさんを自分のものにするのが、まさかこんなに難しいことだったなんて……
傷心に漬け込んで一度抱いてもらって、そこからズルズル関係を続けていけば、絶対身体からでも自分に好意を抱いてくれるようになると信じて疑わなかった。
彼は周囲に見せる協調性を大事にしつつ、それでも太い芯の通った、自分の意志も強い男の人だと思っていたけど、ここまでだったなんて想定外だ。
兵団から自ら去ったにも関わらず、彼の心を掴んで離さない凛さんに、憎しみさえ抱きそうになる。
その上、こんなにも自分の思い通りにならない事実は、今までの自分の執着を手放したくなるような感覚を呼び起こしてきた。