第150章 気遣いの出所
「……凛と身体を重ねることも、ただただいやらしいことをするのも気持ち良いが、こうして抱き合っているのが一番安心するし、心地いいのかも知れないな……」
耳元でポツリと溢したエルヴィンの言葉に、エルヴィンの胸元に顔を埋めたままで、大きく頷く。
「私も、そう思ってた。」
「……さっきまで俺を攻め落とす気満々だったのにか?」
「それは日頃の仕返しを込めてだからね。」
「仕返し、といっても、俺は普段から凛に気持ち良いことしかしていないだろう?」
「そう。だから私もエルヴィンに気持ち良い仕返しを…いや、恩返しをしてあげようとしてるんだよ。」
「なるほど。かなり強引な恩返しだな。」
小さな笑い声と共に、エルヴィンの肩が震える。
そっとエルヴィンの顔を覗き見ると、優しい表情で笑みを溢していて、その顔を見ていると、心臓よりもっと奥にある何かが熱くなるような、不思議な感覚に囚われた。
「……凛?」
私がいきなり黙り込んだのが気になったのだろう。
逆に顔を覗き込まれ、ふと我に返る。
「……ん、なに?」
「俺はこのまま君を抱きしめて眠りたいんだが、凛はまだ“恩返し”がしたいのか?」
「エルヴィン、今日はもうしたくないの?」
いつものエルヴィンの肌の色を取り戻した顔に手を当てる。
布団から出ている部分だからか、もうひんやりとし始めていて、輪郭を包み込むように手を添えてみた。
「……凛は俺をその気にさせる言い方や行動を、本当に熟知しているね。」
「そんなつもりで言った訳じゃないんだけどね……
エルヴィンが本当に疲れてるなら、無理は」
「そんなつもりはないのに、そんなおねだりをしているような顔が出来るのか。」
本音しか話していない筈だが、ニヤつくエルヴィンの視線と声に遮られ、一旦言葉を止める。
腰に回されていた筈のエルヴィンの手は、いつの間にか鎖骨に移動していて、赤く染まった印を撫でていた。