第150章 気遣いの出所
「範司の用事は何だったんだ?」
横向きになり、私の顔を覗き込むエルヴィンの隣に、向かい合って寝転がる。
自然に腰に手を回され、それを受け入れる様に、私もエルヴィンの腰に手を回した。
「私たちが二人きりで過ごす時間を邪魔したくないから、エルヴィンが元の世界へ戻ってからうちに来るって。」
簡単にさっきの会話を要約すると、エルヴィンは少しだけ目を見開いた。
「範司がそんな気遣いを……意外だな。」
「でしょ?やっぱりこれも私がタイムスリップした影響なのかな。」
「どうだろうね。
だが、その気遣いは素直にありがたいよ。」
腰を引き寄せられ、エルヴィンの火照ったままの身体が密着する。
全身を温もりに包まれて、心地良い感覚と匂いに、思わず大きく息を吸い込んだ。
この安心感は、何にも代え難い。
エルヴィンのこの暖かさを手放さなければならない日が三日後に迫っているなんて、やっぱり考えたくない。
それでも三日後までに、私はこの気持ちの整理をしなくては……
範司の予想外の気遣いも無駄にしたくないし、エルヴィンとの限りある短い時間を大切にしよう。
……でも今は、とにかくエルヴィンの体温を感じていたい。
その感情ばかりに支配され、力強くエルヴィンを抱きしめ返した。