第150章 気遣いの出所
「……範司の気遣いが大人すぎて怖い。」
「なに、前の私はそんなに気遣いの出来ない大人だったの?」
「いや……そんなこともない…かな?」
「ははは、曖昧な答え方だね。」
曖昧な答え方になってしまうのも無理はない。
私の知っている“範司”は、気遣いが出来ない、と言うより、凄まじく自由奔放だった筈だ。
それを上手くフォローしているのが火口君だったんだろう。
そう思うと、火口君の存在がなくなった今、範司自身が自分をきちんとコントロールできているのかも知れない。
「なんか不思議な感じがする。
やっぱり火口君が範司の側に居ないからかな。」
「また出たよ、“火口君”。
ほんと、早く彼に出会いたいんだけどね。」
「うーん。でも火口君は範司と出会わなかったことで、のびのびと生活できてるかも知れないから、このまま出会わない方がいいのかも。」
「うわ、また失礼なこと言って!」
私の冗談めかした発言を聞いて、範司は声を上げて笑い出すが、取り敢えずそういうことだから!と手短に会話を切り上げられ、電話はすぐに切られた。