第148章 反省も譲れない想いも
「一週間もエルヴィンと一緒に過ごしたら、もう私はエルヴィン帰さない。
エルヴィンが帰りたいって言っても。眠り続けるようになったとしても。」
「……どうした?突然強引な物言いになったな。」
「そうでもしないと、エルヴィンは納得してくれないから。」
凛は一旦フーッと長い息を吐くと、エルヴィンに向き直る。
そして、絡み合っている指を一層深く絡ませると、エルヴィンはまた視線を落とした。
「納得なんてできる訳ないだろう……」
「ごめん。ありがとう……
エルヴィンが私のことを心配してくれてるのは分かるし、」
「違う。」
強い語感と共に、エルヴィンの視線に射られ、言葉を止める。
「確かに君のことは心配だが、ここに出来るだけ長く居たいと思っているのは、自分の為だ。
凛と少しでも長く一緒に過ごしたい。
自分が満たされたいから、こうして帰りたくないと駄々を捏ねているんだよ。」
「エルヴィン……」
「……すまない。
強引な物言いをしているのは、俺の方だな。」
ため息交じりに立ち上がったエルヴィンの袖を、咄嗟に掴む。
エルヴィンと視線が合うことはなく、ゆっくり手は掴み離された。
「少し頭を冷やしてくる。
俺が冷静になったら、また話し合おう。」
視界に入るエルヴィンはそっと微笑んでいるが、その表情は嘘で塗り固められている。
風呂場へ向かう後姿を見送りながら、今から自分がすべきこと、したいことが、頭を過っていた。