第146章 もっと素直に言えたなら
「………君が俺たちのいる世界に来ることは、本当に反対だったんだ。
この世界の素晴らしさを日々感じていると、ますます反対したくなった。
まぁ、結局理性に負けて、君を強く誘ってしまった訳だが。」
「……どうしたの、急に。」
「突然話したくなった。ダメか?」
「ううん。話して、」
遠い昔の思い出を話すように、少し微笑んだまま目を瞑って話し始めたエルヴィンに目を向け、次の言葉を待った。
「君があの世界に来た当初は、やはり後悔した。
不便な世界での生活を強いられているのに、夜遅くまで薄暗い部屋で勉強させる羽目になり、その上、常に山積みの書類仕事まで任せることになってしまったからね。」
「そんなこと。
全然苦に思ったことはなかったよ。」
エルヴィンやリヴァイと離れ、この世界に居続けることの方が、比べ物にならないくらい苦しかった筈だ。
それは二人とあの世界で共に生活するようになって、より一層感じたことだった。
「……だが、結局今は、君にまた自分たちの世界へ来て戻って欲しい、なんて勝手なことを思ってしまっている。」