第146章 もっと素直に言えたなら
「範司の研究室で、一度スプラッター映画というのを観たことがあるが、そっちは俺もリヴァイも平気だったよ。
人間のそこをそう切っても、そんな血の出方はしない、なんて思えたからね。」
「かなり冷静な見解だね。」
不意に緩んでしまった頬に、エルヴィンの指先が滑る。
今はいやらしい気持ちはないようだ。
そんなことまで、この指先の動きだけで感じ取れるようになってしまっていた。
「だが、死者が墓場から甦るこの映画は、どうも苦手なようだ。
甦ってくれる分には全く問題ないし、むしろ喜ばしいことの筈なのにね。」
「……そう、だろうね。」
どう返事をするのが正解なんだろう。
……いや、多分正解はない。
エルヴィンの気持ちに寄り添えるのは、実際に戦場で命を懸けて戦ったことがある者だけだ。
曖昧にしか答えられず、テレビに視線は留まる。
再びチャンネルを変えたエルヴィンは、徐にベッドへ横になった。