第144章 吐き出され続ける情欲
凛がベッドから離れてしばらく。
エルヴィンはゆっくり瞼を開いた。
「……眠っていたのか。」
思わずそう呟いてしまう程、自然に眠りに落ちていた。
以前この世界に来た時は、こんな風に気を失う様に眠ることはなかった。
この世界にお前が長く滞在することはできない、と警告されているような気分になり、あまり心地の良い目覚めではない。
その上、胸に抱いていた凛もいなくなっていて、一段と強く、胸騒ぎを覚えるようだった。
それにしても、凛が自分に触れていないだけで、こんな不安な気持ちになるのは問題だろう。
いずれこの世界を離れなくてはいけないのにも関わらず、凛と会えなくなる事実が、恐怖にすら感じられる。
今の自分が既にこの調子だということは、元の世界に留まり、凛がいなくなった後の世界に残されたリヴァイやモブリットは、今頃凄まじい虚無感に苛まれている事だろう。
調査直後で本当に良かった……
まずそう思ってしまう自分は、こんな精神状態でも、まだ団長であることを意識できているらしい。
それでもこの世界に居られる限りは、少しでも長く凛の側に居たい。
凛に触れていたい。
いつもより少し重く感じる身体を、ゆっくりベッドから起こした。