第142章 久しぶりのデート
せっかくここまで出て来たから、取り敢えず映画にでも行こう、という話になり、スーツを買った店の最寄りの駅から電車に乗る。
まだ帰宅ラッシュには早い時間帯ではあるが、電車の中は結構な込み具合で、同時に騒がしさもあった。
「この時間でも結構混んでいるんだな。」
「修学旅行生かな?高校生が多いね。」
「修学旅行か。
通りで楽しそうな学生ばかりの筈だ。」
少しだけ口角の上がったエルヴィンに、女学生の熱い視線が集中する。
これだけ整った顔をしている上に、今日はその容姿をますます引き立たせるようなスーツ姿だ。
見惚れてしまう気持ちにも強く納得できる。
その時、スッとエルヴィンに肩を抱かれ、エルヴィンの居た場所に移動させられた。
さっきまで度々ぶつかっていた学生の背中が遠ざかり、替わりにエルヴィンの穏やかな匂いが近付く。
「君が扉側に居る方がいい。」
「……ありがとう。」
スーツ姿に見合った紳士的な行動に、鼓動が弾むことは免れない。
エルヴィンの背中越しに学生たちを垣間見ると、さっきのエルヴィンの自然な振る舞いを見ていたようで、「恰好良い!」「やばくない?」と、黄色い声の断片が聞こえ、興奮した様子が伝わって来た。