第138章 目覚めの時は
「エルヴィンさえ大丈夫だったら、これからおじいちゃんのところに向かうけど、体調はどんな感じ?
痛いところとかはない?」
「いや、俺は平気だが、少し早急すぎないか?」
「そりゃ……エルヴィンも私みたいになったらダメだからね。」
「凛みたいに、というのは、俺が眠り続ける可能性を心配している、ということか?」
「うん……
エルヴィンが、あの世界に必要な人間だってことは、身に沁みて分かってるから。
いつまでもここに留めておけない。
きっとまた、エルヴィンの世界は混乱してると思う。」
団長秘書として過ごした数か月間で、エルヴィン・スミスという人物が兵団にとってどれだけ重要で、必要な人物かは十二分に感じ取れた。
調査兵団はエルヴィンが居なければ、戸惑いや混乱で足並みは乱れ、纏まりがなくなるだろう。
エルヴィンを一刻も早く、元の世界へ帰すべきだ。
「君がそう思ってくれているのはありがたいよ。
だが、」
この状況への焦りからか困惑からか、少し汗ばんでいた手をそっと握られ、思わず身体が小さく跳ねる。
「……“充電”が足りないから、今日はもう動けそうにないんだ。」
エルヴィンに視線を向けると、穏やかな表情のままで目を瞑っていた。