第138章 目覚めの時は
「……そうだね。
私も足りてないよ。」
握られた手を強く握り返すと、エルヴィンの手にも力が入る。
互いにそれを繰り返していると、同じようなタイミングで笑い声が漏れ出した。
「もっと近付いていいか?
この充電の仕方だと、1日ではとても完了しそうにない。」
冗談めかした口調で言われたその言葉を受けて、エルヴィンの隣に移動する。
すぐに強く肩を抱かれ、吸い込まれる様にエルヴィン胸元に縋りついた。
「「……安心する」」
抱き合って第一声が見事に被り、二人同時に吹き出す。
それと一緒に視線は絡み合い、どちらかともなく唇が近付く。
そっと重なった唇は、優しいだけのキスを繰り返した。
エルヴィンがまたこっちの世界に来てしまったことを心配するより、深く安心してしまっている自分は最低な人間だろう……
だけどもし、今ここにエルヴィンが居なければ……
私は1人でずっと呆然とし、何も出来なかった筈だ。
「良かったよ、またタイムスリップできて。」
「……え?」
唇を離したエルヴィンは、呟くように言葉を落とす。
思わず聞き返すと、穏やかな視線が瞳に映った。
「また凛と、こうして二人で過ごすことが出来たからね。
調査で結果を出した褒美がここでもらえたのかも知れないな。」
その言葉を嬉しい、ありがたい、と感じるよりも先に身体が動く。
勢いよく抱き着いた結果、エルヴィンを畳の上に押し倒した。