第138章 目覚めの時は
思うように動かせるようになった身体を起こし、押入から取り出した布団をエルヴィンにかける。
別の世界へ飛ばされた時は夏真っ盛りだったが、気温からして今は夏ではないことは明らかだ。
なかなかの肌寒さを感じながら、重い腰を上げた。
今は一体何月何日なんだろうか。
もしかして、年も違う…なんてこともあり得るのだろうか。
部屋を見渡してすぐ、携帯電話を見つけ、電源を入れようとするが、充電が切れているようで反応はない。
自室に置いてある充電器を取りに行き、早々に電源をもう一度付けた。
年月日を確認し、大きく息を吐く。
自分が別世界で意識を失ったあの時から、2日しか経っていない。
エルヴィンたちの世界にいた期間だけ、こっちの世界の時間も進んでいる。
ということは、別の世界にいた時との時間軸のズレはないということだ。
ピクシス司令と話していたように、遠い未来なんかへ飛ばされることが無くて良かった……
着々と充電されていく携帯電話を見つめながら、ある疑問が湧いてきた。
この家に電気が通っているのはどういうことなんだろうか。
おじいちゃんは、私が別の世界に飛ばされたであろうことは分かっているだろうし、それが確実になった時点で、家の電気やガスを止める筈だ。
それなのに、今普通に電気は使えている。
これはどういうことなんだろう……
取り敢えずおじいちゃんに連絡しようと思い、アドレス帳を開いたところで、“使者と繋がる部屋”の方から、大きな物音がした。