第137章 大切な時間
「お前は聡いし、優しい女だよ。
やっぱりお前の世界のミケには勿体ない女だった。」
「……御食が転生した自分だったとしても?」
「ああ。
だが、今の俺には勿体ないとは思ってないからな。
もしお前が元の世界へ戻らなくてもいい方法を見つけることが出来れば、今度こそあの二人の妨害を押し切ってでも、お前を奪うことにするよ。」
「そうだね。
ミケに本気で迫られたら、かなり揺らぐとは思うよ。」
冗談なのか、本気なのか、察しの付かない声色で言われ、少し身体を離して凛の表情を視界の隅で確認する。
今にも涙が零れそうな俯く視線が瞳に映り、不意に涙袋に指先を沿えた。
「凛。お前にキスしたい。」
「……それ、今回はちゃんと聞くんだね。」
柔らかい笑みを浮かべた凛に顔を近付ける。
拒絶される様子もなく、唇に唇を寄せる。
……が、直前で思い止まり、そっと頬にキスを落とした。
「二人に気遣ったの?」
「モブリットも入れて三人だ。
モブリットこそ、腹の中では相当な嫉妬心を燃やす奴な気がしてる。」
「さすがミケ……」
凛の感心したような声と共に、笑い声も零れる。
「まだ俺は凛に落とされ切っていないらしいからな。
これ以上すると申し訳ないだろう?」
「ふふ…、大変だね、ミケのポジションは。」
自分でも、よくこれだけで抑えられたと思う。そう呟くように言いながら、もう一度凛をしっかりと抱きしめた。