第136章 調査中は思慮の時間
駐屯兵団に着くと、基地の前でスキットル片手に、酒を煽りながら待ってくれていたピクシス司令が、基地内に導いてくれる。
「司令が案内してくれるなんて思っていませんでした。
お忙しいのにありがとうございます。」
「いや、気にするな。
アンカに指示されてのう……
今日は特に急ぎの仕事がないから、ワシは邪魔者扱いじゃ。」
頭頂部を指先で掻きながら、ピクシスは声を出して笑う。
「私も今日からこちらでしっかり働かせて頂くので、何でも遠慮なく言い付けて下さいね。」
頼もしいな、そう言って笑顔を向けてくれるピクシス司令の後に続き、基地の中を軽く案内されながら、アンカのいる部屋に向かう。
部屋に入って早々、アンカに素早くスキットルを取り上げられた司令は、残念そうな顔をしながらアンカに言われるがまま部屋を出た。
「アンカ、ピクシス司令に厳しいよね。」
「他に厳しくする人がいないからね。
これくらいしないと、司令は朝からいつまでも飲んでるから。」
「さすがアンカ。」
部屋を出て行くときの、後ろ髪を引かれるような表情を浮かべていた司令を思い出し、少し笑いが込み上げてしまう。
司令はアンカには弱いし、アンカは司令に強い。
この二人を見ていると、エルヴィンとリヴァイのやりとりを思い出すようだった。
アンカも司令を心から尊敬し、信頼しているからこそ、司令の身体を気遣って厳しくも出来るんだろう。
寝ている司令の頭を思いきりはたいたり、有無言わさず酒を取り上げたりと、少々乱暴な行動も目立つが、司令はそれをされても嬉しそうにしている様子が窺えた。
やっぱり二人はこのままがいいんだと心底思う。