第136章 調査中は思慮の時間
「あの件は君のせいではない。
それに、駐屯兵団にいる間は絶対君を守るから。
今までの心配事は忘れて、安心して過ごして欲しい。」
イアンに頭を撫でられながら、心地良い温もりで胸の辺りが熱くなる。
……本当に私は、周りの人に恵まれている。
気を抜くと涙腺が緩みそうな気がして、グッとこめかみに力を入れた。
「……イアン、モテそうだよね。」
「えっ、何だよ、急に、」
「“絶対君を守る”なんてサラッと言えちゃうところが、天然モテしそうだもん。」
「まいったな……
全くそんなことはないのに、そう思われてしまっていたら、実際本当にモテてないと分かった時に、俺が不憫に思えるだろう?」
「大丈夫。
なんかモブリットと同じ匂いがするからね。
きっとイアンにも隠れファンがいるよ。」
「本当にいるなら、隠れてないで出てきて欲しいんだが。」
困ったように笑うイアンは、手綱を強く握り締め、馬を走らせ始めた。