第135章 力の源
重い瞼を開けてすぐ、目に飛び込んできたのは碧く穏やかに光る瞳だった。
「凛。良かった……目が覚めたか。」
「……エルヴィン………えっ、今何時?!」
急いで身体を起こそうとしてすぐ、ベッド脇の椅子に座っていたエルヴィンの手によって行動は抑制され、再びベッドへ寝転んだ。
「落ち着きなさい、まだ朝だ。」
「朝って何時?まだ出発まで時間ある?」
「まさか寝る直前に話したことを、覚えているのか?」
「覚えてるよ!」
すかさずベッドルームの壁に掛かった時計を確認し、安堵のため息が漏れた。
「良かった……まだ出発まで一時間ある。」
「そうだな。
だが、俺はこれから出掛けなければいけないんだ。」
「え、何で?!」
「憲兵団へ行く。
今日中に渡さなければいけない書類を提出することをすっかり忘れていてね。」
「いいよ!私が渡しに行くから!」
「ダメだ。君を憲兵団に行かせることは絶対に出来ない。」
「大丈夫、入り口までしか行かない!
ナイルに出て来てもらう!」
「残念ながらナイルは今王都で接待三昧の生活を送っているようでね。
しばらく兵団には戻れないようだ。」
ナイル……何でこのタイミングで……
声を荒げて言葉を選ぶ間もなく話していたが、一気に落胆した感情が襲ってきて、思わずため息を漏らした。