第134章 何度でも
温かい唇の感触が心地よくて、何度も押し当てるだけのキスを繰り返す。
調査前なのにも拘らず、こんなに穏やかな気持ちで過ごせるのも、無駄な時間を持て余していないのも、凛のお蔭だ。
いつもなら調査前のこの時間は血が騒いで落ち着かず、既に記憶している調査予定書を何度も見直したり、調査前の訓練や書類仕事で忙しく過ごしていた筈なのに、眠れない時間を過ごしたりしていた。
だが、凛と過ごすことで、そんな無意味な時間を過ごさないで済む。
彼女の体温を感じると、力が漲るのに気持ちは安定した。
前回だって、そのお蔭で調査中は鋭敏に戦え、いつも以上に冴えた判断を下せていた。
薄っすらと目を開けてみると、柔らかい表情が目に留まり、その優しい表情が堪らなくなって、一先ずキスは中断し、強く抱きしめる。
凛の肌の自然な匂いが、ますます心地良さを促した。
「エルヴィン、調査前っぽくないよね。」
「……そうか?」
「うん。すごく落ち着いてるし、いつも以上に優しい感じがする。」
「だが、リヴァイもそうだっただろう?」
そう尋ねると、一刻の間の後に凛は軽く頷いた。
「……やはりリヴァイと何かあったな。」
そう耳元で呟いてみると、凛はため息にも似た笑い声を漏らした。