第134章 何度でも
「すまない、忙しさに感けて言うのを忘れていた。
凛、明日から君は駐屯兵団に身柄を預けようと思っているんだ。」
「へ?」
気の抜けた声が聞こえてすぐ、凛の隣に腰を掛ける。
「この基地で、君一人留守番させるなんて出来ないからね。
今回は調査期間も短いし、留守は残っている者に交代で頼んでいるから、君は駐屯兵団で生活してくれ。」
「……それって、この間のことがあったから?」
“この間のこと”とは、先日俺のせいで拘束されたことを指しているのだろう。
凛が誘拐されたのは完全に俺の落ち度だ。
だが、凛は未だに自分のせいであると心苦しく思っているのだろう。
後ろめたさを感じる視線を遮るように、凛の瞼を撫でる。
「……それもあるが、そもそも女性一人に留守を任せること自体に不安があるんだ。
この辺も、物騒ではない、とは言い切りにくい場所だしね。」
「みんな調査で頑張ってる時に、留守番すらできなくてごめん……」
「凛。俺の話を聞いていたか?
君は兵士たちが留守の間、駐屯兵団で仕事をしてもらう。
留守番する方が比べるまでもなく楽だ。
留守を任せる料理人や医師、怪我人にも、一応意見を仰いではみたが、やはり誰一人として駐屯兵団で借り働きはしたくないようだったよ?」
ハッキリした口調で言った後、凛の髪をそっと撫でる。
凛に無駄な憂慮を与えたくない。
それにこれは紛れもない事実だった。