第131章 心の帯を緩めて
よく考えてみると、この瞬間までモブリットの寝顔を見たことがなかったことに気が付く。
モブリットは、いつも私が寝るまで起きているし、私が起きる頃には既に起きている。
……お母さんか!
自分の母親がそうであった記憶はまるでないが、きっと世の母親もこんな感じなんだろう。
思わずそんなツッコミを入れたくなるくらい、モブリットは私のことを見返り無しで想ってくれている気がした。
ベッドの近くにあった丸椅子を、音を立てない様に慎重に机の横に移動させ、そこに座ってモブリットの寝顔を観察する。
飴色の髪の毛に手を伸ばしたいところだが、触れたことで起こしてしまうのは頂けない。
衝動を抑えつつ、机の上にそっと顎を乗せ、至近距離でモブリットを見入った。
睫毛は思っていたよりも長い。
鼻筋もスッと通っているし、適度に潤いを持った薄い唇も魅力的に思える。
こんなに熟視するのは初めてだけど、この顔だけでも、十分モテるであろうことは理解できた。
視線を徐々に、下へ移動させると、逞しく男らしい首には、太い筋が浮かび上がっている。
緩められた首元から垣間見える胸元は、如何にも硬そうで脂肪の存在を感じられない。
……触りたい。
もはや、当初触りたかった髪ではなく、胸元に手を入れ込んでしまいたい。
そんなことを思ってしまうくらい、こっちの昂奮を誘う体付きだ。