第131章 心の帯を緩めて
「書類のことだけじゃなく、凛は私にとっても大切な存在だからね。」
「……どうしたの、急に。」
「私も凛と過ごす時間が癒しでもあるし、そもそも凛のこと、大好きだから。」
立体機動装置を装備し終えたハンジは、私に笑顔を向ける。
「凛、そんな不安そうな顔しないでも大丈夫。
あなたはこの世界に必要な人間だし、誰一人としてあなたを手放そうと思う人はいないから。」
そう言われてすぐ、強く抱きしめられ、自然とハンジの腰に手を回した。
ハンジの言葉が素直に嬉しくて、心の奥がじんわりと温かくなる。
何でこの世界の人たちは、私が欲しいと思っている言葉を欲しい時に与えてくれるんだろう。
そう思ってしまうくらいに、この世界の優しさに、常に包まれている気がした。
「ごめん、そう言えば昨日お風呂入ってないや。」
「……今のタイミングでそれ言う?」
「あはは!!それもそうだけどね!」
込み上げた涙が引っ込みかけるが、身体を離してすぐ、ハンジの優しい手が頭を撫で、再び涙腺が刺激される。
「凛、いつもありがとう。」
「ううん……
こちらこそ、ハンジ、ありがとう。」
いつも自由奔放で勝手な行動が目立つハンジだけど、不意に分隊長として適している部分を見る瞬間がある。
今もそうだ。
こうして自然に相手を思いやることができている。
そういうところも、範司と一緒だな……そう思うと、矢庭に表情筋が解れた。