第128章 千丈の堤も蟻の穴より崩れる
「エルヴィン団長、」
「凛。君はリヴァイと
司令の元へ向かってくれ。
ここは俺が見張っておく。」
エルヴィンの作り物の笑顔を見ながら、
小さく頷き、
エルヴィンを一人でこの場に残すことについて
後ろ髪を引かれる思いを抱きつつも、
リヴァイの後に続く。
外に出てすぐ、随分久しぶりのように感じる
新鮮な空気を大きく吸い込んだ。
「凛。前に乗れ。出発するぞ。」
リヴァイに促されるまま、馬に跨り、
後ろから手綱を掴むリヴァイの体温を
背中に感じてすぐ、馬は勢いよく走り出した。
「……凛、余計なことを考えるなよ。」
馬を走らせている最中、
穏やかなリヴァイの声が耳に入る。
「自分のせいで、
なんて間違った思い込みをするな。」
私の考えを見透かされたような発言に、
そっと息を呑んだ。
「この世界に来たことを、
お前に後悔して欲しくない……」
風の音に掻き消されてもおかしくないくらい、
小さく呟いたリヴァイの声に
何も言葉を返すことが出来ず、
そのまま馬はスピードを上げた。